親から子へ、お金を受け取った金額が年間110万円を超えると贈与税がかかります。
しかし、財産を受け取らずにきちんと返済すれば、その金額が500万円であろうが、1,000万円であろうが贈与税はかかりません。
基本的に、家族からお金を借りても贈与税の対象としてみなされませんが、「借りた・返した」の証明ができないと贈与税とみなされてしまうことがあります。
税務調査をされたときに貸借証明ができるように、あらかじめ手を打っておく必要があります。
この記事では、「家族間で借金をするときの注意点」をわかりやすく解説しています。
家族(親・祖母祖父)からお金を借りても贈与税はかかりません
基本的に、家族間でのお金の貸し借りについては贈与税がかかりません。
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金になります。
収入を得たときは、家族や知人から貰ったら「贈与税」、また会社から貰ったら「所得税」がそれぞれかかります。
国税庁サイトでも、次のように記載されています。
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。また、自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合、あるいは債務の免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。
引用元: 国税庁
家族からの借金をそのまま返さずに受け取ってしまうと、贈与税の対象になります。
また、お金の貸し借りをした証明ができないと、贈与税とみなされてしまう危険性があります。
家族からお金を借りるときの3つの注意点!みなし贈与に気をつけよう
親からお金を借りるときは、みなし贈与に注意する必要があります。
親族間の借金となると、無利子で貸し借りをするケースがほとんどです。
無利子になるからこそ、親や祖父祖母からの借り入れにメリットがあるといえます。
しかし無利子の借金と、贈与のボーダーラインは非常に曖昧です。
たとえば税務署から指摘されても「親からお金を借りたが、いずれ返すつもりだ!」と言い張れば、いくらでも言い逃れができてしまいます。
こうした曖昧な部分を埋めた法律が、「みなし贈与」です。
夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。
引用元: 相続税法基本通達9-10|みなし贈与
親からお金を借りた場合でも、借用書や返済履歴等がなかったら税務署は贈与としてみなせる特権が与えられています。
みなし贈与にならないためにも、お金を借りるときは次の3つの点に注意しなくてはなりません。
1.借用書を作成して贈与税がかかるのを防ごう
家族間のお金の貸借であっても、借用書などで記録を残しておく必要があります。
税務署やマルサは、家族間のお金のやり取りに常に目を光らせています。
税務調査をされたときに、お金を借りた証明ができないと財産を受け取ったとみなされてしまうかもしれません。
この証明書として効力を発揮するのが、借用書になります。
親から子への金銭の貸与は、とくに贈与としてみなされやすくなりますので、口約束で済まさないようにしましょう。
借用書の書き方について下記で紹介していますので、合わせてご覧ください。
家族間の金銭の貸し借りであっても後日のトラブルを防ぐために借用書の用意は必要になります。簡単な借用書の書き方を例文(見本付き)でわかりやすく説明しています。誤った借用書を作成すると法的効力が無くなりますので、ご注意ください。
2.契約書のとおり毎月きちんと返済をしよう
借用書には、返済金額や返済期間まで明確に記入する必要があります。
たとえば父から子へ金銭の貸与があり、「後で返すから」という口約束をしても、実際に返済ができていなければみなし贈与として認定されます。
なお、出世払い・催促なしの貸借も、みなし贈与に認定されるケースが多いため避けましょう。
3.お互いの銀行口座を通して「貸した・返した」の証明をしよう
金銭の貸借をするときは、その事実を証拠として残すためにお互いの銀行口座を通してやり取りをしていくのが望ましいです。
たとえば父から子へ、お金を貸すときは現金で手渡しするのではなく、口座振込をして貸与する必要があります。
子から父へ、お金を返すときも同様に銀行口座を通して返済をしていきます。
現金による貸借だと、「貸した・返した」の証明ができないため、こちらも贈与としてみなされてしまう危険性があります。
親からお金を借りるときは、「借りた・返した」の証明を残すことが大切です。
家族間のお金のやり取りで贈与税がかからないケース
基本的に、親族間で財産を受け取ったら贈与税がかかります。
しかし、財産を受け取っても贈与税がかからない例外的なケースもあります。
贈与税がかからないケースに該当するなら、わざわざ借用書を作成したり、返済した記録を残したりする必要はありません。
もらった財産の合計が年間110万円を超えない
1月1日から12月31日までの1年間に、受贈者1人あたり110万円を超えなければ贈与税はかかりません。
たとえば父から子へ、借金の返済費用として110万円を支払っても贈与税の対象から外れます。
1人の人が年間110万円を超えない範囲になりますから、たとえば父と母からそれぞれ110万円ずつ受け取った場合は、合計220万円になりますので贈与税がかかります。
この場合、110万円相当の贈与税を支払うことになりますので注意してください。
教育にかかる資金
学校生活にかかわる費用であれば、29歳以下の子・孫へ1人あたり1,500万円まで贈与税の対象から外れます。
ただし、子や孫の所得が1,000万円以下に限られます。
たとえば学費や教材費、文具費、家賃の仕送り、留学の渡米費など。
これらの必要な教育費は、非課税になります。
学費として受け取ったお金で、不動産を購入したり、株式投資などをすると贈与税の対象になりますので注意してください。
結婚・子育て資金
2015年度に結婚や子育てを支援するための非課税制度が開始されました。
祖父母・父母から、子・孫(20歳以上50歳未満)へ結婚・子育て資金を受け取った場合、受贈者1人あたり1,000万円まで非課税となり贈与税がかかりません。
ただし、結婚関係の支払いは300万円までとなります。
結婚関連なら挙式費用、新居の住宅費・引っ越し費用。
子育て関連なら避妊治療費、出産費用、ベビーシッター費用、保育料などが対象となります。
この制度は、2021年3月31日までが有効期日になります。
本来なら2019年3月31日までの予定でしたが、2年間の延期がされて2021年まで制度が利用できるようになっています。
住宅の購入・新築・増改築の資金
課税住宅取得等資金贈与を利用すれば、住宅の購入・新築・増改築、リフォームなどにかかる資金が最大3,000万円まで非課税になります。
110万円の贈与非課税と併用できますので、合計で最大3,110万円までの非課税が受けられます。
ただし、次のように消費税率によって非課税の限度額が異なります。
- 2020年3月31日まで:1,200万円
- 2020年4月1日〜2021年3月31日:1,000万円
- 2021年4月1日〜2021年12月31日:800万円
- 2020年3月31日まで:3,000万円
- 2020年4月1日〜2021年3月31日:1,500万円
- 2021年4月1日〜2021年12月31日:1,200万円
この制度を適用するには、贈与税の申告書を管轄下の税務署に提出する必要があります。
贈与税の金額はいくら?計算方法をわかりやすく解説
では、みなし贈与が認定された場合、贈与税の金額はいくらくらいになるのでしょうか。
税率早見表
基礎控除110万円を差し引いた金額に応じて、税率や控除額が決定されます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
※一般贈与財産用の場合
参照元: https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4408.htm
計算式
- 受け取った金額−基礎控除額110万円=基礎控除後の課税価格
- 基礎控除後の課税価格×税率×控除額=贈与税として支払う金額
たとえば親から子へ1,000万円の贈与をした場合、
まずは、受け取った1,000万円から基礎控除額110万円を差し引きます。
基礎控除後の課税価格は890万円となり、税率は40%で、控除額は125万円となります。
つまり、1,000万円の贈与を受けた場合は、231万円を税務署に支払います。
親から借金をしたつもりが、贈与としてみなされてしまったら贈与税という大きなペナルティーを受けることになります。気をつけましょう。
まとめ
基本的に親子間のお金の貸し借りは、贈与税がかかりません。
しかし金銭のやり取りを記録として残しておらず贈与とみなされてしまうと、贈与税として割高の利息を支払うことになります。
とくに親族間の無利息での貸付けは、税務署の厳しいチェックを受けやすくなります。
- 法的に有効な借用書を作成する
- 毎月返済をおこなう
- お互いの通帳をとおして返済・借入の記録を残す
みなし贈与と認定されないためにも、上記3つの注意点を抑えておきましょう。
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